やけど(熱傷)について
高温の物質に一定時間以上皮膚が接していることによって生じる皮膚や粘膜の外傷をやけどと言い、医学専門用語では「熱傷」と呼びます。やけどをすると、直後から赤みや腫れが生じ、その後も水ぶくれ(水疱)が数日に渡って進行します。細菌感染が起きると皮膚の損傷は深くなります。
炎や爆発などでやけどになるイメージが強いですが、一見そんなに温度高いとは思えない、40~55度程度の温度でもやけどをすることがあります。これは低温熱傷と呼ばれ、皮膚の薄いお子様や年配の方に起こりやすいやけどです。成人の方でも深く寝込んでいたりすると、低い温度でも長い間加熱されるためにやけどを負ってしまうことがあります。
※やけどの範囲が広い場合(5%以上)は、やけどの創傷の治療だけでなく、点滴を用いて熱傷によるショックを治療する必要があります。
総合病院での入院治療が必要なため、連携医療機関を紹介いたします。
やけど(熱傷)の治療
やけどの治療法は、その深さや広さによって2種類から適したものを選択します。1つは保存的治療と呼ばれ、冷却、洗浄、軟膏治療などがこれに該当します。もう1つは外科的治療と呼ばれ、これは植皮術が中心の治療法です。
医師のもとで治療を受けなかったり、細菌感染が起きたりすると、最初は浅いやけどでも深くなり治癒に時間を要し、傷跡が残ることになります。また、糖尿病などの基礎疾患がある場合も上皮化に時間がかかり、治癒までに時間を要することがあります。そのため、できるだけ早く医師のもとで適切な治療を受けることが重要です。
しもやけ(凍瘡)について
冷えが原因で血液循環が悪くなり、組織に炎症が生じることをしもやけ(凍瘡)と言います。寒冷地域で季節の変わり目の温度変化の激しい時期に起こりやすく、特徴としては手足の指先や耳介などが赤黒く腫れることなどが挙げられます。患部はしばしば赤紫色や黒っぽい紫色に腫れ、症状は細い血管が集まる手足の指先や鼻、耳たぶ、頬といった体の末端部でよくみられます。多くの場合、むずがゆい感じや痛みを伴い、悪化すると水ぶくれができ、それが破れて潰瘍になることもあります。その見た目から虫刺され、水虫、洗剤かぶれ、ひび・あかぎれなどと間違いやすいため注意するようにしましょう。暖房にあたったり入浴したりするなどで体が温まると、血流が急に改善されるため、しもやけによるかゆみが強まる可能性があります。
しもやけ(凍瘡)の治療
しもやけでは、トコフェロール(ビタミンE)の塗り薬や内服薬を用いて治療を行います。患部に保湿力の高いユベラ軟膏(ビタミンA、E配合)やヒルドイド系(ヘパリン類似物質)の塗り薬を塗布し、皮膚を乾燥や刺激から守ります。また、強い炎症やかゆみが生じている場合、皮膚の炎症を抑えるためにステロイド剤を処方するケースもあります。その他、血行を良くする漢方薬(当帰四逆加呉茱萸生姜湯など)の内服薬も処方します。
IgA血管炎について
IgA血管炎は主に皮膚(真皮上層)に分布する細い毛細血管に炎症が生じて紫斑や点状出血などを引き起こす疾患です。皮膚以外の症状としては、風邪様の微熱や倦怠感が現れることもあります。その他に関節や腹部、腎臓、神経などにも症状が起こるケースもあります。小児期に発症しやすく、成人、特に高齢者は重症化しやすい傾向にあります。強い腹痛や血尿、蛋白尿が続いて重い腎障害となってしまうこともあります。
IgA血管炎の治療
IgA血管炎の治療は、患者様の症状の程度によって異なる方法を取ります。軽症の場合にまず大切なのは、十分な水分を取りながら安静にすることです。その後対症療法として、皮膚症状がある場合は止血薬や血管強化薬を、関節痛がある場合は非ステロイド系抗炎症薬を処方します。腹部の症状がある場合はまず絶食と輸液を試し、それで改善がみられなければ副腎皮質ステロイド薬を使用します。腎障害が起きている場合にもこの副腎皮質ステロイド薬を使用しますが、治療に抵抗性を持っている場合は入院のうえ、一度に大量のステロイド投与を行うステロイドパルス療法を実施したり、免疫抑制剤を併せて使ったりします。
うっ滞性皮膚炎について
うっ滞性皮膚炎は、うっ滞(血液の流れが滞って)によって皮膚症状を呈する疾患です。血液のうっ滞は、肌の乾燥やかゆみなど、一見関係ないように見える難治性の皮膚トラブルを引き起こしている可能性があります。血液のうっ滞によってかゆみや湿疹、むくみ、色素沈着などが生じるのは、何らかの原因で静脈の流れが滞ると、足に老廃物を含んだ血液が循環せず留まってしまうためです。静脈うっ滞はこのように汚れた血液が足に溜まることを言い、うっ滞性皮膚炎はそれが進行して生じる、皮膚の硬化や潰瘍ができやすくなるといった状態のことです。立ち仕事の経験のある人や多くの出産の経験がある中高年の女性に比較的よくみられます。
うっ滞性皮膚炎の治療
薬を塗布したにもかかわらず皮膚の湿疹やかゆみ、潰瘍が治らないという場合、うっ滞性皮膚炎である可能性が考えられます。その場合、皮膚症状の悪化は静脈うっ滞が原因で生じているため、まずは静脈うっ滞の治療を優先して行うことが必要です。静脈うっ滞は基本的に、弾性ストッキングや弾性包帯などで下腿と足を圧迫するといった圧迫療法で治療を行います。下腿を圧迫しながら歩くと筋肉がポンプの働きをするために溜まっていた血液が押し出され、それだけでもむくみや湿疹、かゆみ、皮膚潰瘍などの症状の緩和が期待できます。また、深部静脈血栓症で静脈の弁が働かず、その結果、血液が逆流しているというケースもありますが、基本的な治療法は圧迫療法なので、弾性ストッキングを長期間着用することになります。表在静脈(皮膚から見える静脈)が逆流し、その原因が下肢の静脈瘤であるというケースでは、レーザー治療を行うか、高周波カテーテルを用いて手術を行う必要があります。その際は連携医療機関を紹介いたします。
湿疹やかゆみ、皮膚潰瘍などの症状は、静脈の逆流を止めれば改善が見込めます。ただし、皮膚の色素沈着に関しては一度生じてしまったら改善するのに長い時間がかかりますので、できるだけ早めに治療を始めることが大切です。